親子上場による弊害
2018年6月22日に開催された、経済産業省のコーポレートガバナンスシステム研究会の事務局説明資料で、「当時の法制審議会の議論において、親会社取締役には資産としての子会社株式を管理する義務があるという見解に賛同する見解が多数出され、親会社取締役の子会社監督の職務が存在することについては、ほぼ解釈上の整理がされた。」と指摘されているように、凸版印刷の取締役には子会社である図書印刷の監督をする責任があります。
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凸版印刷のように子会社のガバナンスに対する責任を自覚しない親会社によって、子会社の少数株主の声が経営に反映されないということは、正に親子上場の弊害です。
この親会社取締役の責任は、子会社に投資している機関投資家のスチュワードシップ責任と重なるものでもあります。したがって、親会社取締役は、子会社株主の機関投資家とも積極的に対話を行うことにより、子会社監督の職務がより適切に果たせることになるはずです。
前述の通り、弊社が2018年6月に図書印刷に行った株主提案に対しては、親会社の議決権を除いたベースでは4割弱の賛成票が集まりました。
コーポレートガバナンスコード補充原則1-1①では、「取締役会は、株主総会において可決には至ったものの相当数の反対票が投じられた会社提案議案があったと認めるときは、反対の理由や反対票が多くなった原因の分析を行い、株主との対話その他の対応の要否について検討を行うべきである。」と定められています。したがって、図書印刷の取締役会は、「会社提案議案」を「株主提案議案」に、「相当数の反対票」を「相当数の賛成票」に読み替えて、少数株主の意見について真剣に議論する必要があると考えられます。